
コランのメニューにココナッツスパを加えたのは、アロマセラピーで来店されるお客様から「タイらしい何かを試したい」という声を何度も聞いたことがきっかけだった。タイマッサージとは別の、もっと体験として「タイの土地」を感じてもらえるもの。それを考えたとき、ココナッツに行き着いた。タイ南部の村では、毎朝新鮮なココナッツを割って、その日の料理や薬に使う。長年、タイの素材として生活と医療の両方に根づいてきた植物だ。
コランで使っているのは、コールドプレス(低温圧搾)のヴァージンココナッツオイル。タイ南部産のものを、長年付き合いのあるバンコクの業者を通して仕入れている。市販の精製されたココナッツオイルは、香りも栄養素も飛んでしまっている。ヴァージンオイルは、開封すると本物のココナッツの香りがする。皮膚への浸透も違う。仕入れたオイルは到着後に検品し、香りと色を必ず確認している。質が落ちたロットは使わない。
「ココナッツスパ」というと、すべての工程でオイルを使うと思われがちだが、実際はミルクとオイルを使い分けている。最初はココナッツミルクのヘアマスクとヘッドマッサージ。次に、ココナッツのボディスクラブ ― スクラブと言っても、コランのものは保湿を高めるマスクのような働きを兼ねている。シャワーで流したあと、温めたヴァージンココナッツオイルで全身マッサージ。それぞれの工程で、ココナッツの違う面を使う。一種類だけで全部やる、というのは私たちのやり方ではない。
ココナッツオイルが肌に効くと言われるのは、中鎖脂肪酸(MCT)の含有量が高いから。MCTは分子が小さく、皮膚の角質層を通過しやすい。さらに、ラウリン酸という抗菌成分を含む。タイの伝統医療では、ココナッツオイルは生まれたばかりの赤ちゃんの皮膚マッサージにも使われてきた。安全性が高く、皮膚バリアを整える働きがある、というのは経験的に知られていた。私たちが2009年ごろから提供してきた施術でも、敏感肌のお客様から「他のオイルでは荒れたけれど、これは大丈夫」と言われることが多い。
私たちが現場で観察してきたこと。ココナッツスパが特に向いているケース。日焼け後の肌のケア(炎症を抑える)。乾燥肌全般。飛行機の長時間移動後の肌の疲労。バンコクの強い冷房環境でカサつく肌。出産後の肌のケア(妊娠中ではなく出産後)。特に女性のお客様で、月1回のメンテナンスとして通う方が多い。香りそのものに気持ちを落ち着かせる効果もあるようで、ストレスの強い時期に予約される方もいる。
向いていないこと。ココナッツアレルギーの方(稀だが存在する)。重度のアトピー性皮膚炎で、皮膚バリアが極端に弱っている状態。オイルが大量に使われるため、施術後にすぐ外出される予定がある場合は、シャワーで充分に流す時間を確保する必要がある。また、髪のヘアマスクは効果的だが、ボリュームを抑える働きがあるため、その日にパーティーがある、という方には軽めの仕上げを提案する。「全員に万能」ではない。お客様の予定と相性を聞いてから決める。
コランのココナッツスパは、150分のフルコースが基本になる。内訳はこうだ。ココナッツミルクヘアマスク&ヘッドマッサージ 20分。ココナッツボディスクラブ 40分。シャワーを挟んで、バージンココナッツオイル全身マッサージ 90分。マッサージはリラクゼーションかディープティシューを選んでいただける。150分コース2,800バーツから。場所はナイトホテル バンコク3階、スクンビット ソイ15。BTSアソーク駅から徒歩5分。全室個室、シャワー完備。当日予約は4時間前までウェブサイト、LINE(@coranboutiquespa)、または電話(+66-62-587-5366/日本語専用 +66-82-658-1088)で承る。
バンコクのスパで「ココナッツスパ」と書かれていても、使われているオイルがどこから来たものかは店によって違う。タイで育ったココナッツから作ったオイルを、タイのスパで使う。当たり前のようで、実はそうでもない。私たちは、タイで19年営業してきた者として、できるだけタイの素材を、タイらしいやり方で使いたいと思っている。ココナッツスパは、その思いが一番素直に出ているメニューかもしれない。
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