
コランがアーユルヴェーダ プログラムを正式に始めたのは2016年だった。それまでの9年間は、アロマセラピーとタイマッサージが中心だった。きっかけは、タイ伝統医療を深く学んでいく過程にあった。タイのマッサージの起源を辿ると、必ずインドのアーユルヴェーダ医学に行き着く。ふたつの医療体系のつながりを知ったとき、片方だけでは見えていないものがあると気づいた。そして、それを中途半端に取り入れるつもりはなかった。2016年、コランはインドからアーユルヴェーダ専門医を招き、雇用した。本物の知識を、本物の人から学ぶ。それが出発点だった。
最初に伝えておきたいのは、アーユルヴェーダはマッサージではない、ということ。マッサージはアーユルヴェーダの一部にすぎない。本来のアーユルヴェーダは、紀元前から続くインド・スリランカの伝統医学体系で、食事、生活習慣、薬草、施術、瞑想までを含む。私たちがコランで提供しているのは、その中の「施術」の部分 ― アビヤンガ、シロダーラ、マルマポイント、ハーバルコンプレスなど。本来の体系から見れば、ごく一部だ。それでも、効果はある。
「ドーシャに合わせて施術をカスタマイズする」とよく言われる。ドーシャ ― ヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(土)。これは体質分類で、人それぞれの傾向を示す。実務では、こうなる。セラピストがお客様の体型、肌の状態、舌の色、話し方、その日の気分を観察する。10分か15分ほどの問診と観察。これでドーシャのバランスを推定し、オイル、圧、施術時間を調整する。教科書通りに診断ツールを使うこともあれば、長年の経験で「この人はピッタが高い」と感じることもある。後者のほうが、結果が良いことが多い。
アビヤンガという全身マッサージで、私たちがとくに重視しているのがマルマポイントだ。インド医学では、体に107のマルマがあるとされる(中国の鍼灸でいうツボに近いが、より大きく、エネルギーが集まる場所と考えられている)。教科書通りなら全107を扱うが、コランでは施術時間の制約もあり、簡潔化している。お客様の状態に応じて、重要な20〜30箇所を選ぶ。圧の強さは、サンスクリット語の文献では「鳥の足が触れる程度」と書かれている。実際にやってみると、これがとても難しい。コランでは熟練したセラピストのみを雇用している。新人を一から育てる場所ではない。最初から正確な施術ができる人が、ここで働く。
私たちが10年の現場で観察してきたこと。アーユルヴェーダ施術が比較的よく効くもの:慢性的な疲労、ストレス性の不眠、デスクワークによる肩・腰の慢性疲労、消化器系の不調(軽度のもの)、皮膚の乾燥、生理不順、軽度のうつ症状。継続することで効果が出やすいタイプの不調が多い。1回で劇的に治る、という性質のものではない。むしろ、月1回を半年続けて、ようやく「あ、楽になってきた」と気づく。そういう種類の医学だ。
逆に、効かない、あるいは適応外のこと。急性の痛み(捻挫、骨折、急性の腰痛)、感染症、発熱、重度の心臓・腎臓・肝臓疾患、悪性腫瘍、皮膚に開いた傷がある状態。私たちは医療機関ではないので、診断もできないし治療もできない。お客様の状態が気になる場合は、まず医師の診察を勧める。「アーユルヴェーダは副作用がない」というのも、半分は誤解だ。体質に合わないオイルを使えば肌荒れも起きるし、強いマルマ刺激は内臓に響く。
コランのアーユルヴェーダは、長さで4種類ある。90分のシロダーラ集中(2,000バーツ〜、不眠・ストレス向け)。120分のアビヤンガ+シロダーラ(全身ケアの基本)。150分のアビヤンガ+シロダーラ+ハーバルコンプレス(より深く)。そして4時間のフルアーユルヴェーダ(体系的なリセット)。4時間コースの内訳は、インディアンヘッドマッサージ&シロダーラ 40分、ターメリック&タマリンドのアーユルヴェーダ ボディスクラブ 30分、シャワー+ティーブレイク 10分、アビヤンガ マルマポイント全身マッサージ 70分、ハーバルボールコンプレス 30分、CORAN à la maison フェイシャル 60分。場所はナイトホテル バンコク3階、スクンビット ソイ15。BTSアソーク駅から徒歩5分。全室個室。当日予約は4時間前までウェブサイト、LINE(@coranboutiquespa)、または電話(+66-62-587-5366/日本語専用 +66-82-658-1088)で承る。
アーユルヴェーダを始めて10年。一番大きな変化は、「治す」より「整える」という考え方が、自分の中に定着したことだ。私たちは病気を治す場所ではない。日々の暮らしのなかで少しずつズレていく体のバランスを、戻す場所だ。週1回でも、月1回でも、年に数回でもいい。続けていれば、体は応えてくれる。それを19年、コランで見続けてきた。
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